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「むふー。早速調理開始なんだな。」
「コレニテ一件落着~!」
何とか戦闘を無事に終えたボク達は、四日目の宿を確保するためにボクはかまどを、ウズマサはテントを拵えはじめたんだな。
今日はボク達のほうが先に集合地点に辿り着いたので、ルシアにテン達を探してもらうようにお願いしたんだな。
すると…
「てんてん、大丈夫?」
「うう…ふ、不覚…」
「貴方の亡骸はクール特急便にて新鮮なまま故郷に配達する、安心して欲しいであります。レター」
「ちょ、そ、そんな縁起悪いこと言わないで…テンさん!すぐに応急手当するからね!」
ルシアを先頭に、できたばかりのテントにみんなが駆け込んできたんだな。
どうやら向こうのパーティーでの戦闘で、テンが大怪我を負ったようなんだな。
「おぅ、コレゾ本当ノ虫ノ息。」
「だあ、もう!蓮の邪魔になるから離れろ離れろ!」
かなりどたばたしたけれども、テン自身の体力と蓮の応急手当のおかげで、テンはすぐに動けるようになったんだな。
「みんな、ありがとー。」
あちこち絆創膏だらけのテンは、韮の束を持ってきてこういったんだな。
「不覚だったよ。あの森で手に入れたこの韮。コイツがねー。」
「韮がどうかしたのかな?」
ボクはテンに尋ねたんだな。
その韮は、昨日ボク達が怪しいと話していた例の森の中に恐ろしく沢山群生していたんだな。
食用にするにはすっかり成長しすぎていて、ボクの見立てでは筋張って美味しくないものだったので、みんなはそれでも何かの素材用にと一人一束ずつ摘んだんだな。
「いやね、あの韮の束をこうして持った時に、確かな記憶を一つ取り戻したんだよ。僕はこの洞窟の中で、槍を振るっていたってことを。」
「槍ハ便利デース。天井裏ノ鼠ヤ猫ヲ突キ刺シマス。」
「お、俺は狙わないでくれよ?!」
源が飛び上がっていたが、テンは頭を掻きながら続けたんだな。
「なーんか記憶がぼんやりしているというか、頭に霧がかかってるみたいな感じなんだよね…。」
「それはボクも感じてるんだな。でも害はないので気にしていないんだな。」
ボクがそう言うと、テンは困ったような顔をしていたんだな。
「金は気楽でいいなあ…もとい。金だけじゃなかったか。」
「え?何?僕のこと?」
「…十中八九そうだと思うぞ。」
きょろきょろとまわりを見ていた蓮の肩を源がぽんぽんと叩いたんだな。
「まあ、みんなそのうち慣れるッすよ。おいらは慣れすぎちゃって、もうどれが何処で何が中の人の記憶なんだか…。」
色々な世界を渡り歩いているというルシアは、平気そうな顔をしていたんだな。
「ところで、次の集配予定地点はどうするでありますか?遅滞なき集配の為に、速やかに決定する必要があります。レター。」
8号が地図を広げたんだな。
みんな頭を寄せて考えたんだな。
「うーん、こことかこことかはきっと進んでいける。テンディの血がそう言っている。」
テンが地図の何箇所かを指して腕(?)を組んだんだな。
「安全に足場を確保するなら、こっちの魔法陣で、進むならやっぱりここじゃない?」
蓮はそう言ってから地図の南西端にある灰色のマスをつついたんだな。
そして、目標は次のテンの一言であっさり決まったんだな。
「じゃあ進む。で、どっちまわりで行く?右回りルート左回りルート。今のうちなら別れちゃうのもありかな。」
「え、いや、なんかパーティー分けるのは嫌な予感がするっす…ああ…ピカピカした物の呪いが見える…」
ボクもこの時ばかりはルシアに賛成したんだな。
…理由はよくわからないけれど。
「それでは、直進するのはどうでありますか?わたくしは水陸両用型であります。レター。」
「直進は、なしだろう。8号は潜れてテンは飛べるかもしれないけど、俺達は水場は無理だぜ?」
泳ぎが少々苦手なボクも、頷いたんだな。
「拙者ハ、コチラノるーとヲ支持スルデゴザル。すたーと地点カラ、ヨリ遠クヲ回ッタ方ガ、何カアルカモシレナイデス。」
結局ウズマサのこの意見が採用されて、ボク達はぐるりと左回りコースで、南方にある石床を目指して進む事にしたんだな。
この日は、ボクにとって、とてもいいことが沢山あったんだな。
美味しい肉料理が好きだという人と、素敵な料理人さんから、お手紙が届いたんだな。
ボクも色々な人にお手紙を書いているので、お手紙は読むのも読まれるのも大好きなんだな。
それから、前の日にテンが手に入れたピッカピカのおにく20の料理が出来たんだな。
いい素材だったのでシンプルにガーリックステーキにしたんだけれども、とてもいい出来だったんだな。
いいことが沢山あったので大喜びだったボクは、すっかり忘れてしまっていたんだな。
この遺跡の、とあるルールのことを。
草原や砂地にいる敵よりも、石床にいる敵の方が強い…ということを。
「おっ!黒い玉みーっけ!」
集合地点で、使い込まれた中華鍋のように鈍く光る黒い玉を見つけたルシアが、それを持ってきたんだな。
でも、ボクの隣で既に刀を構えていたウズマサは緊張した様子でこう言ったんだな。
「我々モ、見ツケラレテシマッタヨウデース。」
ボク達の目の前には、頭を低くして蹄で床をがりがりと削るユニコーンと、からからと進んでくる二体のスケルトンがいたんだな…。